Interview アイディアは書くよりも「描く」 Just ear 開発責任者 松尾伴大さん

ヘッドフォンやイヤフォンを設計する、音響設計エンジニアの松尾伴大さん。現在、一人ひとりの耳の形にぴったりと合った、世界に1台のカスタムイヤフォンを作るプロジェクト「Just ear」に携わられています。ロルバーンを「アイディアノート」として使ってくださっているとお聞きし、興味深い音響設計の現場に足を踏み入れてみました。

Photo:Yasuyuki Takaki Text:Chizuru Atsuta

耳の絵をノートにスケッチ

—はじめに、松尾さんが手掛けられているJust earについて教えてください。

一人ひとりの耳の形に合わせたテイラーメイドのイヤフォンを作っています。イヤフォンの装着性と音質は密接な関係にあり、装着状態によって聴こえる音が変わります。最高の音質を追求し、究極の装着性を実現するために、個別に耳の型をとり、耳の形にぴったりと合った、世界に1台のイヤフォンを作るプロジェクトがJust earです。カスタムイヤフォンはプロミュージシャンやサウンドエンジニアが使用することが多かったのですが、現在では10代から70代の一般の方にも幅広いニーズがあります。

—どのようにプランニングされているのですか。

ソニーでは、代々、「耳型職人」という耳の型を取って、その複製を作るエンジニアがいまして、私はその5代目を務めておりました。さまざまな耳型を使ってヘッドフォンやイヤフォンなどの商品開発に活かしていくのが一番の課題。基本的にはその代に一人しかなれませんので、Just earの構想がスタートしたタイミングで耳型職人は降りましたが、そこで培ったノウハウを基に、音を良くするためにどういった構造にするかなどの基本設計を行いました。耳の形は指紋と一緒だと思ってもらうと分かりやすいのですが、一人ひとりみな微妙に違います。耳に入れた時に、構造的に寸法が成り立つか検証したり、パーツの組み合わせを設計したりします。

—そういったアイディアはどのようなときに思いつくのですか。

どちらかというと座っている時が多いです。特に会議中(笑)。思いつくと自分のアイディアをどうするかばかり考えてしまうことも……。具体的には耳の絵を描いてどう収めたらいいか、位置関係はどうなってるかなどをスケッチしたり図にしたりすることが多いです。大まかなところを頭で考えて、ビジュアルにして構造を見ていくようにしています。

アナログで作業する

—アイディアはどのようにストックされているのですか。

ノートはざっくり使い分けをしていて、日々のスケジュール帳とお客さまのカウンセリング用のノート。そして、アイディアノート。アイディアをまとめるのは文字を書くより絵にして“描く”ことが多いです。それから、パワーポイントなどで資料を作る時は、まずはノートに描くことが多いですね。いちばん最初の作業はいつもアナログです。意外かもしれませんが、僕はエンジニアだけどソフトウェアはあまり得意じゃなくて。実際に手で触れられる、感触のある方が好きなんです。

—その中で、ロルバーンはどのように使われていますか。

ロルバーンの手帳はアイディアノートとして使っています。色や形、サイズなど、プロダクトとしてもとても優秀だなと思っていまして、色使いが特に好きで、今持っているグレーにオレンジ色のツートンの組み合わせなど、どれも絶妙なんですよね。方眼でマス目があるから、図面を描くにはとても描きやすくて、検証する上でも使いやすいです。用途も限定されていないし、カスタマイズできて自由度も高い。あまりいろいろとやりすぎていないところもいいなと思っています。